出雲へ

第67話

そして、俺たちは今、島根県の出雲に向かっている。


「いきなり、出雲とか、なんで?って思うよね」


「そうだよ、しかも晴明の術じゃなくて、公共の交通機関で行くなんてさ。

どういうわけ?」


「偶には、情緒を感じながら、赴くのも悪くないかなと思ってね。」


「車で行った方が良かったんじゃない?」


「くだらないことに神経を使いたくないんだ。」


晴明は、どうやら車の運転は好きじゃないようだった。

現世では、金持ちの息子のようだし、自分で車を運転することも

少ないからなのかもしれないが。

やっぱり、どこか浮世離れしている感じがする。


「こうやって、移り変わってしまった街の風景を眺めながら、対峙したいと

思ったんだよね。」


若干、自分に酔いしれているかのような晴明。


道満は、特急に乗って遠くまで行ったことが無かったらしく、

子供のように無邪気に喜んでいた。


「綾は、出雲に行ったことあるの?」


「無いよ。でも、現世で初めて行く場所に湊と一緒に行けるなんて

凄く嬉しくて。なんか、場違いなこと考えているのは分かってるんだけど……」


確かに、これから妖の大元であろう敵と対峙するというのに

こんなことを言っていていいものやら……。


「なんで京都じゃないんだよ、あれだけ京都にへばりついてたのに。」


「へばりつくとは失礼だな。白狐が、色々と四方八方に情報網を巡らせて

ようやく突き止めたのさ。京都なら、結界が強すぎるから、何処か違う場所へ

ということになって出雲になったらしい。僕の式神の力も何故か徐々に

弱まる気がしていたんだけれど、それも原因のひとつだったようだ。」

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