第66話

「で、俺たちを、再度、京都に呼び寄せたのは、いよいよって

ところなのか?」


「いよいよって、妖との決戦ってこと?」


「それ以外に、理由があるとでも?」


晴明め。

格好つけてるけど、本当は綾に会いたかったんじゃないのか?

何だかんだで、ひと月くらいは、京都に顔出ししてないからな。

かと言って、晴明の気持ちを知っていながら、気軽に揶揄ったりなんて

できるはずもなく……。


「でもさ、妖だけが原因なわけじゃないんだろ?この国の自然災害の

多さはさ。いくら、妖を倒しまくったとしても、根本的な解決になるのか?」


「皇くんは、気づいてないようだけど……」


「あ、俺のことは湊でいいよ。綾のことは呼び捨て禁止だけどね。」


「わかった。湊は、気づいて無いんだろうけど、妖は、メンタルにも

巣食うんだよ。鬱とか、パニック障害とか、そういう病には、妖も

関連していることが、最近の調査で分かってきている。」


「だけどさ、全部を俺たちだけで退治するのは、どう考えても

無理な話じゃないか?」


「そうだね。だから、まずは大元の妖だけは叩きのめしておきたいんだ。

封印しておきたいと思ってる。」


「あ、なるほど、封印が解けて、今の状況になってるってことね?」


「その通り。」


「俺みたいに、ほぼほぼ悩みの無いやつもいるのに。現代人は、皆

大変だよね。」


道満が、申し訳なさそうに話した。


「ごめんなー。晴明の正義感の強さに、道満まで巻きこんじゃってさ。」


「いや、それを言うなら、皇くんと、藤守さんだって、そうでしょ?

いいんじゃない?合コンとかばっかで、俺も飽き飽きしてたとこだし。

ふたりの方が、寧ろ、大変そうじゃん?」


「俺たちは、腐れ縁だし、仕方ないさ。」


「1200年も前からの長い、縁だもんね。」

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