第64話

「お取込み中、失礼。」


「何?お土産のお菓子待ちきれなかったとか?

それとも、喉でも乾いた?」


「どちらも該当してる。」


澄ました顔で、答える晴明だけど、多分内心では、

俺と綾が仲良くしてる姿を見て、嫉妬しているに違いない。


「本当は、俺たちが客人なんだから、お茶とかを振る舞って貰える側

なんだけど」


「この家のことで分からないことなんて、もう無いだろう?」


「あるよ。どの部屋に行けば、何処に繋がってるかとか。」


「ああ、それは、多分説明しても分からないだろうね。複雑な

術を使って、色々な場所に行けるようにしてあるから。」


「さすが晴明。」


「こんなの、僕の術を使えば、簡単さ。」


「ふたりとも、私たちはいいけれど、蘆屋道満が、首を伸ばして

待ってるんじゃないの?」


「ああ、そうだった。」


「『そうだった』って、晴明、自分が連れてきた客人に対して、

それはないだろ?」


全く。

晴明は天然なのか、なんなのか……。

単純に、俺たちの仲に妬いて邪魔がしたいのだろうか?


「雑談はこれくらいにして、リビングに行こう?」


綾は、クスクス笑いながら、お盆を手に取った。


「晴明の気に入りそうなお菓子はある?」


「藤守さん……じゃなかった、ふたりが選んでくれたお菓子なんだから

全部、気に入るよ。」


晴明の本音が、見えそうだったのに、上手く打ち消された。

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