第63話

キッチンで飲み物の準備をし、お菓子を出すことにした。


飲み物は、暑いから、アイスコーヒーにしようかと

綾と相談しあう。


「湊、さっきも、ちょっと妬いてた?」


「うん。綾には全部お見通しだな。」


「たかだか、お土産を手渡しするくらいで?」


「だってさ、あのあとの晴明の笑顔見た?」


「ううん、全然見てない。」


「もう、誰も太刀打ちできないんじゃないかって言うくらいの

爽やかスマイルだったんだぜ?きっと、あいつは、まだまだ

綾に未練あるんだと思う。」


「私、ちゃんと振ってるんだけどな」


「あの性格だから、一度好きだと思った子のことは

簡単に忘れたりできないタイプなんだよ、きっと。

俺もそうだから、よく分かる。」


「湊に愛されてる子は幸せだね。」


「そうだね。誰とは言わないけれど。」


そう言いながら、俺たちは顔を見合わせて笑い合った。


「どうする?お菓子は何かに盛り付ける?」


「盛り付けないと、晴明が煩そうだよな。」


「なんだかんだ言っても、湊は彼の事、よく分かってるよね。」


「前世では、表向きは上司と部下ではあったけれど、親友でも

あったからかな。」


「私は、彼とは親友じゃないんだ?」


「あの頃は、どうだったか知らないけれど、少なくとも、今は

晴明の親友にもなって欲しくないな。」


「うん。湊だけいれば、それでいい。」


「俺も、綾だけいれば、それでいい。」


俺たちが、仲良くそう言い合っていると、咳払いが聞こえた。


振り返らなくても、きっと。

咳払いの主が誰なのかは、余裕で予想がついた。

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