第62話

「久しぶり」


晴明の家に着いて開口一番に、ありきたりな言葉を口にする。


「一か月ぶりくらいかな?」


「多分」


「あ、これ、お土産。良かったらどうぞ。」


綾の手から晴明の手に、色々選んだお土産が渡った。


「こんなに沢山、選んでくれたんだね。ありがとう。」


その笑顔は、イケメンならでは。

その辺の女子ならイチコロだろう。


綾には通用しないけれど。


「どういたしまして。」


「蘆屋道満とは、仲良くなれたのか?」


「それが……」


晴明が口ごもると、そこへ噂の主の登場。


「皇くんと、藤守さん、元気だった?」


相変わらずのチャラい恰好。

なのに、口調は普通だから、なんだか面白い。


「元気だよ、どう?晴明とは上手くやれてる?」


「それがさ、聞いてくれる?」


「どうした?」


「晴明にも恋愛してもらおうと思って、合コンのセッティングやら

色々と手を尽くそうと思ってるのに、全然、乗り気になってくれなくてさー」


「そうなのか?」


俺は晴明を見ながら、尋ねる。


黙って首を縦に振る晴明。


まぁ、晴明のこの性格じゃ、転生した蘆屋道満とは気も合わないことは

一目瞭然かもしれない。


「僕には妖の退治の方が合っている気がするし、この国で起きている自然災害を

少しでも食い止めるのが先だと思うと、そんな気も起きなくてね」


確かに。

晴明が、合コンに行く姿を想像すると笑いたくなってしまう。


「とりあえず、せっかく、お土産買ってきたんだから、みんなで食べよう?」


その場を取り繕うべく、綾が言葉を口にする。


「そうだね、そうしようか。」


「一応、和菓子もあるけど、洋菓子も買ってきた。」


「お茶でも淹れる?緑茶?紅茶?珈琲?」


「藤守さんが淹れてくれるなら、何でも構わないよ」


「俺は、おふたりにお任せで」


「じゃあ、湊、手伝ってくれる?」


「OK」


俺たちは、キッチンに向かった。

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