再び、古の都へ

第61話

「手土産は、やっぱり北海道ならではのものがいいよね。」


と言ったのは綾。


今日は、晴明の待つ、京都に行くため、お土産選びをしていた。


「でも、あいつは、和菓子が好きなんだろ?」


「やっぱり、京都にずっと住んでるからなのかな?それとも

前世も関係してるのかな?」


「前世が関係してるとなると、俺たちだって和菓子好きになるだろ」


「そうだよね」


そう言って、綾はふふっと笑った。


愛しさが込み上げ、ハグしたくなる。


が、人前なので、そこはグッと我慢。


「わーこのお菓子美味しそう!ねー、湊はどう思う?」


「俺は、甘いもの嫌いじゃないけどさ、女の子より

甘いものに詳しいわけじゃ無いから、綾に任せるよ。」


「私に任せちゃったら、大量のお土産を買ってしまいそう。」


「いいじゃん、きっと晴明喜ぶよ。」


と言いながら、俺は少しムスッとしてしまう。


「湊って分かりやすいね。」


「顔に出てるって言うんだろう?」


「うん。やきもち?」


「悪い?」


「ううん、なんだか嬉しい。だって、湊くらい格好良かったら

晴明くらいのイケメンじゃなきゃ、やきもち妬くことないでしょ?」


まったく、綾は……小悪魔だ。

言ってることは正論なんだけど。

晴明のためにお菓子を選んでいるのかと思うと、あまりいい気がしない。


だから綾に翻弄されてしまいそうで、それが嫌で、晴明の待つ

京都へ行くのが、憂鬱になってしまう。


「綾」


「何?」


「あとで、たーっぷり可愛がってやるから、覚えておけよ?」


「湊にだったら、いくらでも可愛がられたいから、しっかり

覚えておくよ?湊こそ、今の言葉忘れないでね。」


俺たちは、そんな風に他人からみたら馬鹿みたいなことを話しながら

お土産を探す。


素知らぬ顔で、綾の手を握る。


綾の心も体も貰ったのに、まだまだ足りない、

そう思う俺だった。

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