第56話

とりあえず、今日のところは一旦、北海道へ引き上げることになった。


晴明と、一応、蘆屋道満に挨拶をする。


「晴明、日本を騒がす妖の件はどうする?

道満は見つかったけどさ」


「俺に出来ることなんて、今のところ女子の紹介くらいなもんだよ。

そんなんで良ければ……」


「まぁ、それも一興だけれど」


晴明は、にやりとしながらそう答えている。



さっきの、恋人探しの件に関しては、まんざらでもなさそうに見える。


「蘆屋道満、君とは前世では敵対関係だったけれど、どうだろう、

良ければ、現世では手を組んで、妖たちを共に迎え撃たないか?」


「もしも、俺にそんな力があったとしても、俺は、遠慮しとくよ」


「でもね、道満、君がいてくれると、やっぱり心強いんだよ」


「晴明も、そう言ってることだし、協力してくれない?」


「前世を思うと、あなたの事は、簡単には許せないけれど、

私からもお願いします」


「参ったな、そう言われても……」


「みんなも揃って、そう言ってるんだし、是非とも君にお願いしたいんだ」


「昔の記憶くらいしかないけれどいいのかな」


「助かるよ、それがあれば充分、妖どもと対抗していける」


「分かった、足手まといにはならないよう、極力、前世の力を取り戻す

努力をするよ。」


「ありがとう」


「や、やめろよ、晴明、俺たちは、そんな仲が良かったわけでもないのに

照れくさいじゃないか」


「そうと決まったら、まずは、皇くんと、藤守さん、一旦、北海道に帰って

ゆっくりしてきて」


「え?別に、もう少しくらい、こっちにいてもいいけど?」


「私もいても、いいって思ってた」


「うん、お気遣いなく」


「じゃあ、お言葉に甘えて、帰ろうか?」


「そうね、今度は手土産持ってくる」


「ありがとう」


「じゃあ、また」



そう言って、俺たちは、晴明の家をあとにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る