第55話

確かに、いくら晴明が頑張ってみても、綾の気持ちは

ブレないだろう。


だけど、晴明の良くないところは、自分に死角は無いと

思っているところだ。


そして、何でもお見通しなのをいいことに、出来ないことは

出来ないと最初から決めつけているところ。


そんなんじゃ、ひとりの女の子の気持ちを掴むことだって、

この国を守ることだって無理なんじゃないのか?


もっと男気を見せないから、きっと晴明じゃダメなんだと

思った。


俺より、イケメンなのになー。


と晴明を見つつ、何となく、少し優越感に浸ってしまった。


それにしても、晴明はどんな風に綾にアプローチをかけているんだろう。


綾に聞いたら、嫌なやつになってしまう。

かと言って、晴明自身が、どう口説いているのか言うはずもない。


「晴明はさ、モテるんだから、選びたい放題だろ?

好みのタイプとか、ないわけ?」


「僕は一途な方だからさ」


良く言えば、一途だけど、悪く言えば……。


反論しようかと思ったが言葉を口にするのを止めた。



「なぁ、晴明。俺たちだけじゃなく、蘆屋道満も転生してるってことはさ

もしかしたら、平安時代の人間が他にも転生してるって考えることは

出来ないか?」


「だとしたら、何が言いたいんだ?」


「小野小町とか清少納言とか、紫式部とか、同じ時代を生きていた人物が

この時代にもいるんじゃないかって思うんだけど……」


「つまり、君は、僕に、恋人を見つけろと言いたいんだね?」


「だってさ、せっかく生まれ変わったわけだしさ、確かに式神とか

術を使えるのは凄いと思うし、そこまでの力を身に付けたら

闘いも面白いんだと思うけど、お前なら、向かうところ敵なしだろ?」


「そこまで褒められるのは光栄だ」


言ってることは、先ほどの蘆屋道満と同じなんだけれど

俺の言葉のほうが、晴明に対しては説得力があるようだった。

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