第54話

「前世では、今以上にアプローチしてたかな」


そう言いながら、晴明は、綾の後ろ姿を追うような目をした。


その目は、とても切なげで悲しそうで……。

俺は言葉に詰まる。


「いいよね、二人は同じ北海道生まれでさ。

僕だけ京都って、ハンデが大きすぎる……」


それを言われてしまったら……

俺は余計に何も言えなくなりそうになる。


けれど、意を決して言葉を発する。


「晴明、お前さえ、その気になったなら、多分

俺は、お前には勝てないと思う。」


「人の心は移ろいにけり……なんてね。

二人の絆には僕がどれだけ頑張っても太刀打ちできないと思うよ。」


「……晴明って、意外と器の小さい男なんだな」


「藤守さんにも言われたよ、君と全く同じことをね」


「本当にできるって確証はないけれど、俺が晴明だったら

全力で綾を守る、そして、この国も守って見せる、くらいの

はったりはかますけどね」


「はったりじゃないだろう、少なくとも、彼女の気持ちは

1200年経った今でも君に向かってるんだから。この僕を

差し置いてだ。」


1200年経っても振り向いてもらえない女の子のことを、

1200年後にも、自分ではない違う相手を好きになった彼女のことを

今もなお、好きな晴明。


未だに、自分の何が綾に振り向いてもらえない原因なのかを

分かっていないようだ。



こんなにイケメンなのになー。

いつまでも振られた女のことを思ってるなんて

晴明って、ほんと、馬鹿だ。

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