第52話

となると……。

綾と晴明の仲をこれ以上縮めないように

俺は努力しなければならない。


リビングに蘆屋道満をひとり残し、俺は

キッチンへと向かった。


「あ、湊!待ちきれなかった?」


「ちょっとね」


俺は何も考えていないふりをして

ポーカーフェイスを決める。


「晴明の家、渋くて、和菓子しかないんだってー」


そう言いながら、綾はクスクス笑っている。


「藤守さん、さっきから笑いすぎじゃない?」


そう言って、綾を見つめる晴明の視線は優しかった。


「いや、晴明らしいんじゃない?なんか拘りそうだもん」


「えー?そうかなー」


「懐かしいね。

よく、こうやって、三人で馬鹿な話とかしてたなって……。

皇くんの横には、いつも藤守さんがいて……」


晴明はそこで言葉を止めた。


晴明は、1200年以上前から、綾が気になってたのかもしれない。


でも、俺と言う、綾の相棒がいることで

綾にアプローチできなかったんじゃないかと

勝手に推測。



馬鹿な晴明。

綾の事が好きだと、綾がいなくなってから気づく俺よりも先に

きっと……

いや、絶対、綾のことが好きだったくせに。

何故、晴明は、綾の事を好きだと伝えなかったのだろう。


やはり、宮中での帝に一番近い側近だったから、それほど

身分も高くない、しかも自分の部下に恋心を抱いてるなんて

言えなかったのだろうか。

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