第48話

「仲がいいのはいいことだけれど、ここは僕の家ってこと

忘れてない?」


「なんだよ、晴明。前は、ふたりで泊っていっても

いいとか言ってたくせに」


「見て見ぬふりくらいしてよね」


「見たいと思ってなくても、リビングでは、やめて頂きたい」


「はいはい、分かったよ」


「蘆屋道満の手がかりは、どうなんだよ?」


「それが……」


「へぇー、ここが晴明の家なんだ、立派だなー」


「誰?その人?」


「蘆屋道満」


俺たちと歳がさほど変わらないような男子が、登場した。

今時の若者っぽいファッションで、髪は明るい茶色に染めていて

ピアスまでしていた。そのうえ、イケメン。


ごっついオッサンを想像していた、俺は度肝を抜かれた。


「本当に?」


「よろしくな、現世での名前はどうでもいいか。

前世では、俺は、いつも晴明と比べられて嫌な思いばかり

していたけれど、現世では楽しくさせてもらってるんだ。」


話しぶりからして、本人で間違いなさそうだ。


「霊感は?」


「それがさ、俺、現世では、ほぼほぼ、霊感とかなくってさ、

まるっきり一般人になっちゃったんだよね」


初対面なのに、気さくに話す彼が、あの憎々しい仇の蘆屋道満だとは……。

しかも、めっちゃ、軽そうな奴……。


綾は、それでも不安そうに俺の後ろに隠れていた。


「でも、前世の記憶は取り戻してるんだよな?」


「前世ね、思い出すと良心の呵責でいたたまれなくなるから

あまり思い出したくないんだよね、なのに、晴明がさ

とりあえず、一緒に来てくれって、しつこく俺に頼むから」


「一応、見つかったことをちゃんと二人に報告したくてね。

こんな感じだから、僕たちの役には立ってくれそうにもない」


晴明は、そう言ってため息をついた。


「晴明もさー、日本の未来のためとか、そんな正義感まき散らさないで

俺みたく、気楽に生きてみたら?恋愛とかしないわけ?俺は、現世での

恋愛とかを思う存分楽しんでるよ?」


「あれだけ僕らを苦しめた、お前にそんなことは言われたくはないな」


「だってさ、現世は現世でしょ?今は帝が一番の権力者とかでも

ないわけだし」


「あーダメダメ、晴明にね、前に、私が聞いたの。恋愛に興味ないのかを。

そしたら、無いって、即答されたはず」


綾が、漸く、安心したようで、俺の後ろから出てきてそう言った。

そんな綾の姿を、切なげな表情で見つめる晴明。


どう見ても……


未練たらたらなんじゃないか?


現世で出逢った時には、俺が既に綾の彼氏になっていたからとはいえ……。

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