第45話

なんだかんだ言いつつ

俺の方が綾の手のひらで転がされている感がある。


他の女子にされたら

きっとムカついてるけど

綾なら全然、腹立たしいとも思わない。


正直に言って、今まで誰とも付き合ったことが

ないわけじゃ無いけれど……


やっぱり、綾は特別だなーと思う。


俺が、そんなことを考えながら

ぼんやりしている間に

綾は、買ってきた食材をてきぱきと

袋から出していた。


「ねー湊、冷蔵庫にしまっちゃってもいい?」


「悪いな、綾にやらせてしまって」


「んー?いいよー、だって今日だけじゃないし」


「ん?」


「湊は鈍いよねー、今日だけじゃなくて、これからもっと

沢山、ここに来るねって意味だよ?」


「来る気満々?」


「ダメ?」


「いや、光栄」


平和な現代に生まれ変われて本当に良かった。


綾に再会出来て、本当に良かった。


まだ平和な今に満足してちゃいけないけれど

これから、晴明との約束を果たすことを考えたならば。


今は

今日は

束の間の休息。


だとしても、もっと綾に近づきたい。


「そんなの後回しにしない?」


「ダメだよー、食材が傷んじゃうでしょ?」


そう言いながら、テキパキと空っぽの冷蔵庫に

食材をしまっていく綾。


その姿を見ながら、同棲とか新婚って

こんな感じが毎日続くのかなと思った俺は

にやけた顔がいつまでも緩みっぱなしだった。

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