ふたりの距離

第41話

晴明の式神、白狐が北海道の主のキタキツネに

力を貸してくれたおかげで、漸く大学の方には

平穏な日々が訪れた。


あれから、大量の妖魔が出ることは

少なくなった。


そんなわけで、綾とふたりでの居残り練習は

無くなる。


偽者の東は、いつの間にか大学に来なくなった。

当然と言えば、当然だけれど。


そして、東のことは、皆、忘れていった。


俺と綾を除いては。


「居残り練習が無ければ、無いで、なんか

物足りないよな」


「そうだね……」


「ん?」


何か言いたげな綾の言葉に反応する。


「せっかく時間あるんだから、デートとかって

発想は無いの?」


「あ……」


「もう、湊はいつも真面目なんだから。

前世の時だって、全然、恋文とかくれたこと

無かったし」


「それは……」


「本当に私のこと好きだったの?」


「失ってから、気づくことってあるんだよ……

だから、あの日のことを思い出す度、苦しくなるんだ……」


「湊は格好いいから、今も昔も、モテそうで妬けるの」


「仮にだ、俺が、モテるとして、他の女子になびくとでも?」


「思わないよ。思わないけど……」


「何?続けて?」


「湊の家にいきたいな」


「え?!」


「何よーその、”え?!”は

これでも、一応、彼女でしょ?」


これでも、じゃない。

彼女なんて言葉じゃ済まないくらい

大切な大事な最愛の女の子なんだよ、

綾は。

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