第38話

「大学に通ってる間以外、なるべく例の道を使って

こちらに来てくれないだろうか?あの大学の妖魔退治は

もう大体、収拾がついただろう?」


日本の一大事とあらば、反論はできない。


俺と綾は、晴明の言うことに同意し、大学が休みの日などは

京都にある、晴明の自宅に繋がる道を使って、京都の守護に当たることになった。


「京都はね、至る所に妖魔が出る、よく皆、

何も分からないまま普通に生活してるんだろう?って不思議に思うくらいにね」


「でも、事件は少ないわよね?」


「それは、きちんと結界が張られてるからに他ならない、だけど、もし万が一

その結界が破られてしまうことがあったなら……この都どころか、日本中が、

地震や災害だらけになってしまう」


「蘆屋道満だけが原因なわけじゃないのかもしれないね」


「僕も、それはちょっと思う、ただ、前回は敵だった彼も味方にしたら

どうなんだろうって考えたのさ」


なるほど……

晴明の方が頭はいいはずだから、そこまで考えているのは当然か。



蘆屋道満、思い出す度に憎らしさが込み上げる。

あの時術を使って、あの時、猫に化けて、綾や他の人間を食い殺した敵。

あいつに会ったなら、絶対に敵討ちをしてやると思っていたんだ。


晴明、とっととあいつを見つけ出してくれ。

もう二度と、綾と引き離されないように、綾を少しでも危険に遭わせないように

するために。



「ところでさ、君たちも、今、大学生なんでしょ?家族とか心配しないの?」


「俺は一人暮らしだから……綾はまずいんじゃないの?

お父さん、煩そうだし」


「そうだね、ちょっと連絡入れとく」


綾はスマホを取り出して、家に電話をしたようだった。


「大丈夫だった?」


「うん、湊と一緒って言ったら、『ゆっくりしてきなさい』だって」


……。


それは一体、どういう意味なんだろう……。


「ふたりさえ良ければ、泊って行ってもいいんだよ?」


「泊るって……いきなり言われても……」


「あぁ、綾は、女子だし色々準備がいるよね」


「ちょっと、晴明、いくら部下だったからって

俺の彼女を“綾”なんて名前で呼ぶのは禁止」

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