第36話

「でもね、晴明に化けたキツネくん、私たちは、大学生だし

日常の生活っていうものもあるから、旧来の知り合いである

晴明の頼みだとしても、簡単には受け入れられないかな……

第一、 京都まで、どれだけの時間とお金がかかると思ってるの?」


諭すように話す綾に晴明に化けたキツネは言う。


「大丈夫です、京都と北海道を結ぶ道は晴明様の術によって

作られていますから」


「それは本当なの?」


「確かめてみますか?」


「どうする、湊?」


「信用して大丈夫なのか?君を」


「騙していた次点で信用ならないのは分かります

ですが、考えてもみてください。

多分、晴明様なら、あれくらいの妖魔が現れようと

ひとりで始末しているはずだと思いませんか?お二人にフォロー

されなくても」


言われてみれば、確かにそうだ。


「だから、おふたりには、私の命の恩人である晴明様のために

ひと肌脱いで欲しいのです」


まぁ、日本に大惨事が起きている原因のひとつが

分かっているのに、全く協力しないという手はないよな。


「分かったよ、で、いつ行けばいい?

さすがに今日とかは無理なんだけど」


「ひとめお顔をお見せするだけでも難しいでしょうか?」


「え?顔見せるだけでいいの?」


「本当は、もっと早く、おふたりを京へ案内する予定だったのですが……」


俺は、キツネが化けた東が口ごもったのを見て

察する。


最近もまた、ちょっと大きめの地震があったんだった……


死者、行方不明者を含めたら、2桁では済まない人数の地震が……


簡単に京都の守護を外れて、北海道に来るのは難しいに決まってる。


「手土産とか何もなくていいのかな?」


「要らないそうです、とにかくまずはお二人のお顔が見たいとのことです」


「そうと決まれば、行くしかないな」


「すぐ行って、すぐ帰ってこれるものなの?」


「はい、その辺のことは心配ありません」


善は急げということで

俺たちは、キツネが化けた、晴明に連れられて、懐かしい京都に

向かうことになった。

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