第35話

そうだったんだ……

地球温暖化とか色々言われているけれど

日本を守るために張られた結界の術が1200年もの

時の間に、徐々に徐々に力が弱まってきていたのか……


多くの人の命を奪った天災

人間の力ではどうすることもできないと

言われていたけれど

闇の力のせいならば、納得がいくような気がした


「そして、皇くんと、藤守さんには、しっかり謝って

おかなければならないことがあるんだ」


もしかすると……

いよいよ、あの満月の夜の大惨事について話す気になったのか?

東は……


「僕はね、実は、晴明様の式神のひとつである、狐の代理なんだ」


え?

晴明じゃなかったってことか?


じゃあ……俺はまだ、晴明本人に会ってはいないということなのか?


「騙したのか?」


「ごめんなさい……晴明様の式神の白狐様に頼まれて、北海道では

影武者的な存在となってました」


「最初からなの?」


綾は、特に怒ることなく、穏やかに問いかける


「いえ、白狐様の話では、一度は、おふたりに実際に会っているとのことです」


どおりで……

あの高貴で品のある晴明にしては、庶民的すぎると思ったんだよな

あんな陰陽師の最高位に位置する安倍晴明が、危機が迫ってるから

なんていう理由くらいで、部下だった俺たちのところまで、やってくるはずがない。


それも、妖を封印するための結界を張ってある、あの京都を簡単にあとにするはず

なんてあるわけがないんだ。


『詰めが甘いのは相変わらずだな』


なんて、本物の晴明に会えたら、鼻で笑われてしまいそうだ。


「道路を渡ろうとした時、車にはねられて動けなくなっているところを

晴明様に、助けて貰ったのが、そもそもの始まりなんです。

そのあと、晴明様の使いの式神である白狐様がきて、身代わりになって

欲しいと頼まれたのです」


「化けたこととかないんでしょ?よく身代わりになる気になったね」


「命を助けて下さいましたから、当然です、晴明様には感謝しても

しきれません」


「本来なら、あなた方と口をきくことも無かったと思いますが……

私は、実は北海道の主のキタキツネなのです」


キタキツネが北海道の主か。

なんだか納得いく気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る