第32話

そんなわけで部活は終了して

今日は、おとなしく退散することにした。


こう毎日のように

妖魔の退治ばかりでは

ストレスも溜まってしまうから

丁度いい気分転換だ


ファミレスに入って

4人掛けのテーブル席についた


俺は綾の隣をキープした


「そんなに、ガードしなくても

彼氏を目の前にして、彼女にちょっかいなんて

出さないから」


東は笑いながらそう言う


「ガードしてるというか、自然な流れだろ?

付き合ってるんだし」


「そうか、もうふたりは付き合ってるんだったね」


「東くんは、彼女は?」


「うーん、いまのところ興味ないかな」


「モテ男なのに勿体ないね」


「まぁ雑談はこのくらいにしておいて……」


え?

雑談だったのかよ?

久々に再会して、楽しく会話するとか

そういう感じじゃなかったのか?


「僕はね、三人が同時に転生したということは

きっと何か良くないことの前触れなんじゃないかって

思ってるんだ」


しんみりとした口調で話す東の言葉を

綾はしっかりと聞いていたから

俺もそれに合わせることに。



「僕たちの最大の敵を藤守さんは覚えてる?」


「それは覚えてる、“蘆屋道満”でしょ?」


「ご名答、となると僕の正体も分かるよね?」


「……え?!もしかして、東くんは……安倍晴明?」


「久しぶりだね、君と会うのも」


「湊は知ってたの?」


「俺も、さっき、話してて気づいた」


「じゃあ、東くん……でいいのかな、呼び方……」


「お好きなように」


「天下の安倍晴明がなんで、こんな北の外れにある北海道にいるの?

出身地、北海道じゃないでしょ?」


「うん、生まれも育ちも京都なんだよね」


「アクセント、なんとなく違うもんね」


「標準語話す練習してきたんだけど、やっぱり駄目か、さっき皇くんにも

すぐ、出身地がこっちじゃないってバレたんだよね

というか、僕の方が聞きたいくらいだよ、

どうして、僕だけ京都で、ふたりは北海道なのかを」


ここで、俺の記憶が甦った。


そうだ!

確か前世で俺は、願ったんだ


生まれ変わったら、絶対、彼女を大切にすることを

幸せにすることを


その願いを神が受け入れてくれたんじゃないだろうか……


あまりにもロマンチックすぎて

現世の安倍晴明である東には言えなかったので

話題を無理矢理変えた。



「東は、式神とか現世でも使ってるわけ?」


「勿論、ふたりもそうだと思うけれど、霊感が強いせいで

何度も命拾いをするような出来事に遭遇しまくってるからね

そのたびに式神たちに助けて貰っていたよ」

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