三人目の人物

第29話

弓道部に入って半年ほど。

学部が違いこそすれ彼女との仲は良好だった。


居残り練習と称する妖魔退治を行う毎日。

という日課付で。


こんなに毎日妖魔が出てきたんじゃ

おちおち、休日ゆっくりデートというわけにも

いかない。


と彼は思っているのだが

彼女はどうなのか……。


彼の気持ちを見透かすような目で

彼女が見つめてきた。


「どうしたの?」


彼は、素知らぬ顔をしながら


「別に」


と言葉少なに感情を伝える。


校内をふたりで部活に向かいながら歩いていると

不思議な雰囲気の人物とすれ違った。


前から知っている様な、懐かしい雰囲気。

それでいて、近寄りがたいような崇高な雰囲気の人物。

しかも、顔立ちがとても整っていて、品が良さそうだった。


「あの人知ってる?」


彼は、彼女の方を見ながら尋ねる。

「ううん、あんなイケメンいたら、女子が黙ってないと思う。

あ、でもね、湊の方が私はイケメンだと思ってるから」


そこは、しっかり訂正してくれる、彼女の事を

彼は愛しいなと感じた。


あの男子は、一体何者なんだろうか?


すれ違いざま、目が合い、微笑したように見えた。


俺を知ってるのか?

俺たちを知ってるのか?


敵か?

味方か?


彼は頭を悩ませた。


あの表情がとても気になった。


相手も、こちらを知っていそうなあの微笑み方。

一体何なんだろう。


気になる……。


その瞬間、彼の記憶が甦る。


彼は、もしかすると

俺たちと一緒に戦っていた人物なんじゃないか?


俺たちに指令を与えてくれていた人物が

いつもいて、顔までよく見えなかったけれど


彼が。

あのイケメン男子が。

それなんじゃ?

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