第28話

彼女に付いていきながら

ドアを開けて彼の目に入ってきたのは

沢山の本だった。


すげー読書家。

俺が読んだことのない小説とかばっかだ。

漫画も少しはあるけれど。


「何か、飲み物くらいはいるよね?

何がいい?」


「お構いなく」


「気遣わなくていいんだよ?」


彼女が、にこにこ笑うたびに、心臓が

ドキドキした。

それを彼女に悟られたくなくて

彼は、先ほどの本棚に近づいた。


歴史ものとかも読むんだ。

あ、これは、俺も読んだことある。


「湊―、まずは座って」


座ってと言われても、何処に……。

とりあえず真向いでいいのか?


彼女の部屋のテーブルを前に

彼は、胡坐をかいた。


「まだ、びっくりしてる?」


「かなり」

「だよね、ごめんね」


「でもねー私たちが、ちゃんと付き合ってるって

証明しておかないと、あとあと面倒だから」


「面倒って、どういうこと?」


「妖魔の退治が、近場だけで済むと思ってた?」


「いや、思ってない」


「ね、だからいまのうちから、私の両親に

紹介しておきたかったんだ。

もし、妖魔退治の最中に私に何かあったらって

思ったら、大変でしょ?」


「大丈夫、綾のことは、絶対守るから」


「ありがと、なんかその言葉、心強くて

嬉しい」


少しずつだが、ふたりの距離は色々な意味で

縮まってきているようだった。


真正面に座っていたはずの彼は、彼女の隣に

座り、彼女を抱き寄せた。


「もう、心配すんな」


「うん」


ふたりの視線が重なって、顔が近づく。

先ほどの、やりとりの続きを……。


彼女の柔らかな唇と彼のそれが

重なった。


そして、彼は強く、彼女を抱きしめるのだった。

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