第21話

「もしかして、”綾”って呼びたいとか?」


「藤守さんさえ良ければ」


「でも、私たち別に付き合ってないのに

部活内で”綾”なんて呼んでたら

付き合ってるって思われちゃうわない?」


「藤守さんさえ良ければ」


彼の同じセリフの連発に

彼女はクスクス笑いだす


彼は、こんなに真剣なのに

彼女には伝わっていないのだろうか


「皇くん、私、まだまだ前世の記憶

完全に蘇ってないの。

今日、ふたりで妖魔の退治しながら

なんとなく昔も一緒に戦ったこととか

思い出せたけれど……」


「俺たちさ、すごい名コンビだったんだよ。

前世では。だから、さっきも違和感なく

協力し合いながら、妖魔の退治が出来たんだと

思う」


「そっか。さっきからなんだけど、私、

前世でどんな風に命を落としたのか

気になるんだけど……」


「それは……」


「いいよ、無理に言わなくても。

きっとよっぽど無残な死に様

だったんでしょ?

私自身思い出そうとするたびに

何かの圧がかかってるみたいに

思い出せないから」



「俺は、心配なんだよ。

君がまた、無理して、命を

落すようなことになったら……って

また1200年も待たなきゃ

会えないなんてなったらって

思うと……」


「私が心配?」


「心配なんてもんじゃないよ、今日だって

この場所で、あんなに妖魔が出るなんて

知ってたら、藤守さんの居残り練習は

断固、阻止していたし」


「じゃあ、とりあえず形の上だけだけど

付き合ってるって設定にしといてあげる」


「何?その上から目線は」


「だって、私、皇くんも霊感強くて

名前通りの格好いい能力を持ってるってこと

以外何も知らないもの」


彼女はにっこり笑いながら

彼に手を差し出す


「よろしくね、私の相棒くん」



え……

その相棒って呼び方は

前世では

俺の専売特許だったんだけど……


彼は苦笑いしながら

彼女の手を握った。

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