もっと近くに

第22話

相変わらず、俺は

日中は部活内で、雑用的なことを

していた。


でも、彼女の仮初ではあるけれど

その居残り練習に付き合っている時は

少しだけ、弓矢の射方を彼女から

教わることも少しはあった。


いくら運動神経のいい彼でも

簡単に彼女のレベルまで

腕を上げるのは簡単では

無かったけれど

それでも、彼的には

彼女の傍にいられることが

心配するだけで我慢せずに

済んでいたので

心が少しは軽かった。


「皇くん、腕はもうちょっと

上にあげて」


「こう?」


「うん、いい感じ、

それで的狙ってみて」


バシッ


「うわ、ど真ん中に当たった」


「なかなか筋がいいね」


「それは、綾の教え方が

上手いからだよ」


「まぁね」


そう言いながら

彼女は、くすりと笑う。


「それにしても、綾って

男子に呼ばれるのって新鮮だなー

親戚とかにしか呼ばれたこと無いし」


「一応、念のため聞いておくけど

彼氏は?」


「いないいない、だって

私、女子校だったし」


「俺は男子校」


「共学じゃなかったの?

皇くんは、共学だったら

きっとモテモテだったと思うよ」


「湊でいいよ

モテてたのかなー

大学入ったけど、

誰にも告られたり

してないんだけど」


「狙ってる子結構いるよー

私の知り合いの子とか

皇くんがいるから

弓道始めようかなー

とか言ってるし」

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