第20話

ふー……


久々に手ごたえのある数の

妖魔だった


藤守さん

大丈夫かな


何も言わないけれど……



「いつもね、居残り練習してるって

言ってたけど、あれ半分嘘だったんだ」


「え?」


「最初は夜遅くまで練習して

腕をあげるつもりだったんだけど

そのうち、妖魔が少しずつ増えてきてね

どうしようかなーって思ってた」


独り言のように

語りかける彼女の横顔を見つめながら

彼は、切ない気持ちに囚われていた



やっぱり、彼女で間違いない


俺の前世での相棒だった

一度も名前を呼ぶことのなかった

最愛の……女の子



先ほどの

柔らかい感触は

まだ残っていた


今すぐにでも

また

君をこの手の中に

閉じ込めて


もう危険な目には

遭わせたくないのに……




「ずっと探してた、君を」


「1200年位前から?」


「いや、そこは違う、

入学式の時からなんだけど」


「なーんだ

千年の恋って

こういうのを言うのかなって

期待してたのに」


彼女は、残念そうに

苦笑いする


どこまで本気で

残念がってるのか

分からないけれど。


「ずっと、ずっと君に会いたかった

あの時、言えなかった言葉を

言いたいって、ずっと思ってたんだ」


彼は素直に自分のありのままの

想いを懸命に伝える



「ずっと前から君の名前を

呼びたかったんだ」


「名前なら、さっきから”藤守さん”って

呼ばれてますけどー」


彼は、がっくりと首をうなだれた


ダメだな

やっぱこういうの慣れてない


君への想いを

ちゃんと言葉にして伝えたいのに

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