第16話

「ずっと、君を……」


そう言いかけながら

彼は彼女を抱きしめた


「いきなり、どういうつもり?

1200年前のことは

私はまだ、あまり思い出してないんだけど

私たち、恋人同士とかだったの?」


「ごめん、今のはそういうんじゃない

今、藤守さんの後ろから、妖魔が

手を伸ばしてたから」


「ちょっ妖魔が手を伸ばしたくらいで

いきなり、知り合って間もない女子を

抱きしめるの?」


彼女は、勝気な性格なのか

彼にかばって貰ったことが

気にくわなかったようだった


「ごめん」


彼は非礼を詫びながら彼女から

離れた


「なんで今日は、こうも妖魔が

多いのかしら……

皇くんの名前って本当に王っぽいから

私、未だに半分疑ってるんだけけど」


「敵じゃなくて、味方の王かもしれないとは

思わないわけ?」


「そんな世の中甘くはないって、分かってるし

今まで、なんとかこれでもひとりでやってきたもの」


「あ、そう」


1200年前は、あんなに可愛いことを

言ってたくせに

今の彼女は、バリバリひとりで何でもこなすような

感じに見えた



せっかく、君にとってのヒーロー的存在として

現れようと思ってたのに



まぁいいや

守らなくても大丈夫なくらい

彼女が強いのかどうか


丁度、妖魔も増えてきたことだし

試してみるか、彼女の力を。

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