第10話

「このあと、皇くんは暇?」


「え?」


「あ、変な意味とかじゃなくてね

私、部活終わった後も、一人残って

いつも練習していくんだよね」



何だ……

そっちの意味か……


って、何をがっかりしてるんだ

俺は




それでも

部活の終わりまで

頑張れるモチベーションは

上がる


ふたりだけで

話せるなら

色々訊きたいことが

聞けるはずだから


まず

何を聞いたらいいんだろう

何から話せばいいんだろう



「何話してた?」


一年の他の部員が

話しかけてきた


「いや、大した話じゃない」


「秘密主義なんだな」


「いや、本当に、大した話じゃないんだ」


「そっか。そういえば、この弓道場の秘密

知ってる?」


「秘密って何?」


「この弓道場さ、出るらしいんだよ」


「出るって、何?お化けとか?」


「そう、まさにそれ!」


「起きるはずのない音が鳴ったり

聴こえないはずの音が聴こえたり

だから、気を付けた方がいいよ。」


彼は、その話を聞きながら

不思議に思った。


そんな、おかしな場所だってこと

まさか、彼女が知らないはずは

ないんじゃないかと


それなのに

部活終わった後

ひとりで居残り練習なんて


霊感ゼロのタイプとか?



それとも

単なる、噂話なんだろうか



部活が終わるまで

その真偽は分からない



今日の部活が

終わって静かになって

彼女とふたりになるまでは

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