第9話

「あ……」


「あ、名前なんで知ってるのかって

顔してるね、入部希望の書類見たから。

すごく珍しい名前だよね

しかも格好いい名前」


大抵の人物から

難しい名前だとか

読み方が分からなさすぎる

と言われている彼の名前を

さらっと読んだ彼女に対し

彼は余計に好感を持った


「ありがとう……

あ、名前……?」


「私は、藤守 綾って名前だよ」


「教えてくれてありがとう」


「ううん、早く弓に触りたいんでしょ、

そんな顔してるよ」


「それもあるけど、藤守さん凄いから

毎回注目してしまうんだよね」


「いやいや、全然、まだまだだよ」


彼女はそう言っていたが

彼は知っていた

彼女が実は全国大会で

何度も優勝するほどの

腕前だということも


俺も弓道やってたなら

彼女ともっと早く知り合えたのかな


彼女は、まだ何も覚醒してないのだろうか


俺を見ても

何も思い出さないのだろうか


俺は

こんなにも会えたことが

嬉しくて


あの事故を思い出すと

胸が苦しくなっているのに

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