第6話

彼の目に留まるのも

無理は無い


その人物は

何度も矢を射っているいるのだが

百発百中なんじゃないか

というくらい

放った矢がすべて

的のど真ん中に当たっていたからだ



「凄い……」


彼は、いつの間にか独り言のように

その言葉を口にしていた


運動神経抜群の自分だけれど

彼女の的中率に敵うのか

自信が無くなるほどだった


弓道部員の一人が

彼に気づいた



「新入生?」


「そうですけど?」


「彼女、凄いでしょ

君と同じ新入生なんだけど

ずっと弓道やってたらしくて

自分たち上級生より

腕が立つんだよね」



彼はその話を聞きながら

先ほどの人物に注目する


私服じゃないから

余計に分かりやすかった

夢の中と同じ格好の彼女



あの子は

俺がずっと

探してた女の子だ


間違いない


いや

見間違えるもんか


名前は

何ていうんだろう


手っ取り早く彼女に

近づくには

俺もこの弓道部に

入ることなんだけれど……


そんな不純な動機でいいんだろうか?


不純?


不純じゃない


もうずっとずっと

君と出会える日を待っていたんだ


やっと

会えたんだ

夢でしか会えてなかった君に

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