ずっと探していた

第3話

いつもより長く感じたゴールデンウィーク。

その毎日の中で、彼は、いつもの記憶の断片以上に

長い夢をみた。




いつもの見慣れた街並み

恐らく、修学旅行とかで

行ったことのある京都


そこで、俺は、彼女と会話していた。


いつもは断片的なのに

何故か、今回は会話が続いてる。




「あーあー、世の女子は、文のやり取りをしたりして

恋愛を楽しんでるのに、なんで私たちは、こんなこと

してるんだろうねー」


「こんなことって、大切なことだろうが」


「まぁ、そうなんだけどね」


「そんなに恋愛したい?」


「……ううん、ちょっと言ってみただけ。私ひとりじゃ

ないもんね」


「そうだよ、俺もいるし」


「うん」


「今日の妖魔はどれくらいの力持ってるんだろうな?」


「え?」


「ん?なんだよ」


「ううん、相変わらずだなーって、ずっと変わらないね」


「ずっとって、何が?」


「全部、初めて出逢った時から、変わらないなーって」


「それは、褒めてるのか?貶してるのか?」


「ふふ、ねぇ、私にもしものことがあったら……」


「何、縁起でもないこと言ってるんだよ」


「だって、私たちの仕事って、命をかけてるじゃない

いつ、どうなったって、分からないよね」


「そんな風に気持ち的に油断してたら、お前、妖魔に負けるぞ?」


「そうだね、今日も頑張ろうね!」


「頼むな、相棒」


「相棒って……いっつもそうなんだから、名前で呼んでよ」


「はいはい、今度な」


「今度って、もう、絶対だからね」


そう言いながら、彼女は笑っていた。

その笑顔は、特別で、とびきりで、俺にとっては最高だったんだ。


最高だったのに、最後まで俺は、彼女の名前を呼ぶことをしなかった。


その頃は仕事の依頼を解決するのが第一だったんだと思う。


いや……

本当は違う


違ってることに、薄々感づいていたんだ俺は。


だから、次は次こそは絶対


そう思っていたのに

俺は、それを実行できずに終わってしまった。


と或る任務中に、彼女は命を落としてしまったから……。

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