第2話

彼の記憶は、遥か遠い昔のものだった。

時代は、着ている着物や建物の感じからして

平安時代くらいのようで

彼はいつも、もう一人の相棒である人物と

組みながら、妖魔らしきものと戦う記憶。


その人物とそれからもう一人の人物が

毎回、毎回、何か危機が訪れるたびに

彼の記憶の中から呼び起こされるのだった。



だから……

もしかしたら

あの女子が自分の記憶を完全復活させるための

トリガーになってるのかもしれない。


こんな風に、あの記憶が脳裏を翳めたのだから。



入学式で会ったということは

恐らく、同学年の可能性が高い。


しかし、この大勢の学生の中から

どうやって、彼女を見つけ出したらいいのか。


入学してひと月、彼はゴールデンウィークを前に

途方に暮れていた。



空を見上げると、月が輝いていた。


「満月か……」


自然とそんな言葉がこぼれた。


そして、その満月を見た時

彼は、耐え難いほどの切なさを

感じていた。



きっと

この満月にも何か理由があるんだろう……


何か大切なことを

俺は多分忘れてる。

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