第27話

「高橋君、ちなみにライブには行ったことあるの?」


戸惑っている俺をよそに、築島は、また質問を投げ掛けてきた。



「残念ながら……」



「そんなに好きなのに?」


「なんかさ、一人で行くのって勇気いるじゃん?」



「確かにね」



「もう、三回も行き逃してるよ…」



「そうなんだ?」



「今年こそは!って思ってるんだけどね…」



「行ってもいいけど?」



「え?」



「あたし、ライブ行ってもいいよ?日にち決まったら、教えて?」



「えっ?!マジで?」



「うん、これだけコピーしてもらったら、行かないわけにはいかないよ」



彼女は、楽しそうに笑っていた。



俺は、テンションが上がった。


マジかよ?

行ってくれるなんて?

自分の好きなバンドを築島と見に行けるんだ?



築島と一緒に……



築島にとっては、深い意味が無かったのかもしれないけれど



俺は、築島と行けることが嬉しくて仕方なかった。



この時の俺は、そのわけに気づいて無かったんだけど。


というか、気づかないふりをしていたのかもしれない。


気づいたら、多分意識して動けなくなっていただろうから。

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