4.夏がはじまる

第23話

築島が、あの店でバイトをしていることは、どうやら誰も気付いていないようだった。



俺だけが知ってる秘密…みたいな感じで、なんだか嬉しい。



そして、俺は築島にコンビニで、ばったり出会って以来、バカ丸出しで好きなバンドについて、よく語るようになった。



「なるほどねー、その曲で高橋君は、そのバンドの虜になったわけだ?」



「俺は、運命感じてるけどね」



「運命かぁ…そんなにいい曲だったの?」



「今時期の、真夏には、ぴったりだね」



「ふーん、どんな感じの曲なの?」



「俺に歌えと?」



「カラオケとかで歌ってるんでしょ?」



「うん、定番」



「そんなに虜になるような曲なら、聞いてみたいな」


「えっ?!マジで?」



「うん、高橋君をそこまで、はまらせた曲だから、気になる」



「じゃあ、今度CD焼いてくるよ」



「えっ?いいの?」



「俺が、バンドの話しても聴きたいって奴は、誰もいなかったから、逆に聴きたいなんて言われて嬉しいよ」



「うわー!ありがとう」



築島は目を輝かせて喜んだ。社交辞令じゃなさそうなところが、余計に俺を喜ばせた。

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