第22話

「からかってる?」



俺は、怪訝そうな顔をして、築島に問い返した。



「違う違う!そこまで夢中になれるものが、あっていいねって意味。

高橋君って、どこか皆と違う雰囲気持ってるなぁって、思ってたんだけど、こういう趣味があったんだね。」



「違うって、どういう雰囲気?」



「うーん、自分をしっかり持ってるみたいな?」



「ただの、音楽バカだよ」


俺は絶対、変な印象を持たれたと思ったのに、意外な、誉め言葉が帰ってきて、動揺した。



自分を持ってる




なんて言われたのは、初めてだったから。



友達もクラスの奴らも皆、俺が好きなバンドの話をしだしたら、半分呆れたように聞いていた。



だから、俺は、自分は、音楽バカ。


……正確に言うと大好きなバンドバカなんだけど……。



と思っていたから。



「いいじゃん、夢中になれるものがあるって、いいことだよ」



築島は、にこりと笑って、接客の仕事に戻った。



自分でも思ってた。


夢中になれるものが、あるのは、いいことだって。



その夢中になってるものを他人に肯定されるのは



ちょっと



いや、かなり




嬉しい。

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