第20話

築島は、いつも帰るのが早い。


部活もやってないし、一人行動が多いから、女子たちと会話に耽ることもないわけで。

だから、余計帰りが早いんだろうけど。


チャイムの音が鳴り終わるのと変わらぬ早さで教室から出ていく。



何か用事でもあるのか?それともバイトでもしてるのか?


と思ったけど、本人には聞かない。築島は、謎が多くて、一つ聞いたらキリが無い気がしたから。

それに、あれこれ詮索するのは、俺の性じゃない。



しかし、意外とあっさり、築島が早く帰る理由が判明した。



俺は、学校帰りに、駅前のコンビニに立ち寄った。音楽雑誌を買うために。発売日は、今日で、このあたりのコンビニでは、ここしか、その雑誌が置いていなかったので、いつも、この店を利用していた。



「いらっしゃいませ」



店員の声と同時に店内に入る。


が、なんとなく聞き覚えのある声。


振り返ると、そこには、コンビニの制服姿に着替えた、築島の姿があった。



「あれ?築島?」



「高橋君!やだなぁ、クラスの人に会うなんて」


築島は苦笑していた。


俺も、気まずかった。


が、音楽雑誌のためなら、背に腹は替えられない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る