第17話
それから、また少し経ったけど、築島は、まだ俺の教科書を見る日々が続いた。
普通……二週間も経つんだから、教科書くらい揃えたっていいのに。
築島の行動は、いささか不可解だった。
その理由は、いずれは分かるんだけど、その時の俺は、何も気付くことが出来なかったんだ。
いや、気付かないほうが築島のためには良かったのかもしれない。
なのにクラスの奴らは、勝手な憶測で、こんなことを言った。
「築島さー、まだ教科書揃えてないんだな」
「うん、そうみたいだね」
「俺、思うんだけど」
「何?」
「築島、怪しいよ」
彼は、そう言うと含み笑いをした。
「怪しいって?」
「お前、気付かないのか?」
「だから、何だよ?」
厳しい顔で睨む俺。
「多分、わざとだよ」
「だから、何が?」
「お前の隣で教科書見せてもらうのが、居心地いいんだよ」
ますますにやけながら言う。
「どういう意味だよ?」
「お前に気があるんじゃねぇ?」
「……!」
「良かったな、お前にも彼女が出来そうで」
その言葉を聞いてから、俺は、築島を意識していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます