第17話

それから、また少し経ったけど、築島は、まだ俺の教科書を見る日々が続いた。


普通……二週間も経つんだから、教科書くらい揃えたっていいのに。



築島の行動は、いささか不可解だった。




その理由は、いずれは分かるんだけど、その時の俺は、何も気付くことが出来なかったんだ。



いや、気付かないほうが築島のためには良かったのかもしれない。



なのにクラスの奴らは、勝手な憶測で、こんなことを言った。



「築島さー、まだ教科書揃えてないんだな」



「うん、そうみたいだね」



「俺、思うんだけど」



「何?」



「築島、怪しいよ」


彼は、そう言うと含み笑いをした。



「怪しいって?」



「お前、気付かないのか?」



「だから、何だよ?」



厳しい顔で睨む俺。



「多分、わざとだよ」



「だから、何が?」



「お前の隣で教科書見せてもらうのが、居心地いいんだよ」


ますますにやけながら言う。


「どういう意味だよ?」



「お前に気があるんじゃねぇ?」



「……!」



「良かったな、お前にも彼女が出来そうで」


その言葉を聞いてから、俺は、築島を意識していった。

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