第81話

蓋を外すと視界に入ってきた

お弁当の中身に

僕はちょっと驚いた。


凄い…色合いが綺麗だ。


「綺麗なお弁当ですね」


「これは、母から教わったんですけど、

お弁当の中身は、赤、黄、緑の三色を入れると

色合いが鮮やかになっておいしく見えるらしいです」


「料理本とかの中にあるお弁当みたいですね」


「社長…褒めちぎりすぎです」


「いえ、本当に」


「お口に合うといいんですが…」


「いただきます」


僕は、最初に、卵焼きから食べてみた。


これって…

しばらく食べていないけれど

母の作った卵焼きの味に似ている…

少しだけ、甘味があって…


「卵焼き、美味しいです」


「本当ですか?良かったです、他のおかずも食べてみてくださいね」


彼女に促されるまま

他のおかずも食べてみる。


「どれも、これも美味しいです、吉田さん、料理得意なんですね」


「得意と自慢できるほどじゃないですけど、社長から沢山褒めてもらえて

嬉しいです、昨日の夜から下ごしらえとかしといて報われました」


「昨日から、準備してくれてたんですか?」


「さすがに、揚げ物とかは、準備しておかないと、いきなり朝から

作れないですからね」


僕は、それだけで、胸がいっぱいになってしまった。

たかだか、数回食事をご馳走したくらいで

こんなに手の込んだお弁当を作ってくれるなんて…


激務に追われていた吉田さんが来る前の僕に、頑張ったな

と言ってあげたいくらいだった。



幸せ過ぎて…


泣きそうだ…。

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