第82話

それからの私たちは…

1月近く仕事をし

それほどの進展もないままでした…


というのも、会社的には

いいことだと思うんですが

仕事の忙しさが尋常じゃなくなっていたのです。


それもそのはず…

どの会社もお盆に入る前までに

ある程度の仕事のめどを

つけたいらしく、やたらと商談が入っていたせいでした。


社長と一緒にランチに行きたいと思っても

朝、社長と顔を合わせたきり

私の終業時間まで社長が帰社しないことも

多々あって…

すれ違うことが多い日が続いていました。



そんなある日のことでした。


社長は、いつもの出勤時間より

早い時間に会社に着いていて

朝からメールのチェックをしていたようでした。


「おはようございます、今日は、どうしたんですか?」


「おはようございます、仕事がかなり溜まってきていたので

少し早めに来て片付けてしまおうかと思いました」


「無理しないでくださいね」


「吉田さんの顔を見ると、無理したくなるんですよね…

まぁ、頑張る気が出てくると言うか」


そう言いつつ、社長は、パソコンの画面と

相変わらず、睨めっこ状態でした。


ちゃんと、食事とか摂れてるのかな…

なんだか、最初に出会った頃と比べて

やつれているような気がするのは、気のせい?



「今日も朝から取引先に行くのですが…」


私は、社長の言葉の続きを待ちました。

社長は、器用にメールの返信らしきものを

打ちながら、話していました。


「そうなんですか」


「吉田さんは、都合大丈夫ですか?」


「都合ですか?」


「今日の、商談なんですが、一緒に来てもらいたいと

思ってるんです」


「え?私もですか?」


「はい、無理にとは言わないですが、出来れば

お願いしたいんです」


「私で良ければ、お供しますよ」


「ありがとうございます」


画面越しに見える社長は、爽やかな笑顔を

浮かべていた。

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