第76話

また、彼女を困らせてしまった…


でも…せっかく一緒の休憩なのに

お弁当持参じゃないのに、コンビニで

済ませるっていうのも

なんだか味気ない気がした。


そんなに財布の事情を心配されるほど

経営状態が良くないとでも

思われているのだろうか…

初日の月曜日は、てきぱきと動いて

仕事をバリバリこなしていたつもりだったんだけど…

忙しくなさそうに見えたのかな…



「…社長は、ズルいです…」


「え?」


「社長に、『ダメですか?』って聞かれて

ダメだって言える人なんて、そうそういないんじゃ

ないですか?」


困ってる…けれど…

困ってる姿も可愛らしくみえた。

10くらい離れている歳の差なのに

全然、年上という感じが、こういう時は

しなくって…

抱きしめたい衝動に駆られた…


「吉田さんも、そうですよ」


「何がですか?」


「吉田さんも、僕にとっては、ズルいです」


抱きしめたいと思っても

事務所に二人きりというわけでもないのに…

愛しさが込み上げてくるような、そんな姿を

見せられても、何もできないなんて…

他の男から見たら、どう思うかなんて

分からないけれど、僕には、ズルく感じられた…


異性に翻弄されるタイプではなかったんだけどな…


僕を簡単に変えてしまう彼女は

やっぱり特別な存在…

運命を感じるそんな存在だと思った。

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