第73話

「…お、はようございます」


コンビニに着く前に声を掛けられた事に

驚いた様子の吉田さん。


「驚かせてしまいましたか?」


「あの、社長、歩くのが今日に限って、物凄く速かったので…」


「待たせてしまってはいけないと思って、早歩きになっていました」


僕は嘘つきだ。


本当は、少しでも早く、彼女に会いたい気持ちが優先していたのに。

見栄を張って、そんなことを言ってしまったことに後悔していた。


見栄というか…正確に言うと早歩きする僕の姿を

後ろから、彼女に見られていたことが

少し、恥ずかしく感じていたからなんだけれど…


早歩きしている時の

僕の表情は見られていなくて良かったと思った。

ニヤついている僕の顔を見られていたら

嘘をついて誤魔化すことが出来なかっただろうから。


でも、もう既に誤魔化しきれないくらい

僕の表情は緩みっぱなしだった。


深夜遅くまで、電話で話せたこと。

そして、朝から彼女と一緒に会社に向かえること。


その一つ一つが

嬉しくて、たまらなかった。


そんな僕の正直な気持ちを

彼女に伝えたなら、


やっぱり、年下男子だな


と思われてしまうのかもしれないけれど

それでもいいと思うくらい

僕は、彼女のことが好きになっていた。

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