第62話

彼女と別れ、一人家路に向かう僕だったけれど。

やはり、少し葛藤はしていた。


僕のほうから手を離したこと。

おやすみなさいと別れ際の言葉を言ってしまったこと。

本当なら、もう少し一緒に居たいと思ってたことも言えないまま…


もしかしたら、彼女だって

もう少し一緒にいたいと思っていたのかもしれないのに

有無を言わせる暇も与えないまま、帰ってきて良かったのだろうか…


僕と彼女の気持ちは

一体何処まで通じ合ってるのだろう…


言葉にしないと

分からないという点で

僕らの関係は、相変わらずもどかしいまま。

既成事実こそあれど、本当に心から通じ合っているとは言えないだろう。


それでも…

着実に一歩ずつ距離が縮まっていくなら

それでいいと僕は、思うようになったから、今はこれでいいんだ。


相変わらず、月は綺麗で…

隣に、彼女が今もいたなら

僕は彼女にどんな言葉をかけたのだろう…



さっきみたいな

曖昧な言葉じゃなく

分かりやすい言葉で


一緒にいられるだけで幸せだと思います。


そう言っていたのかもしれない。


彼女もそう思ってくれたなら

本当に、幸せだけれど…


今頃、彼女は何をしているのだろうか…


窓から月を眺めながら

ぼんやりと僕のことを考えていてくれたなら

嬉しいけれど…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る