第57話

社長と繋いでいる手。


なかなか離せずにいた。

もう少し繋いでいたいとは思うけれど

どのタイミングで離したらいいのだろうか…


男の人の手って

ゴツゴツしているイメージがあったけれど

社長の手は、男性のわりに綺麗な手で

指が長くて、ピアノなんか弾いたら

見映えがするだろうな…という感じだった。


駅に着き

ホームで電車を待つ間も

私たちは手を繋いだままだった。


心の中に沸き起こる想いが

溢れそうで仕方なかった。


愛しさって

こういう感覚をいうのかな…


だとしたら、私は歴代の彼氏に

こんなにドキドキしたことも

愛しさを感じたこともなかった。

社長がイケメンだということを

差し引きしたとしても…


横目でチラッと社長を見たら

少しだけ照れたように笑ってくれた。


誰かが自分に向けて笑顔を見せてくれることの

嬉しさを噛み締めた。


愛されるって

こんなに幸せなんだ


さっきの彼の夏目漱石の言葉の話に対する

私の返事で、私の気持ちも伝わったのかな。


今日は、朝まで一緒にいたいな。


でも…もしそんなことをしたら

明日、一日、お互い仕事にならなさそうな気がする…


電車がホームに入ってきて

私たちは、電車に乗り込んだけれど

やっぱり、繋いだ手は離さずにいるのでした。

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