第54話

桜井と別れ

やっと二人きりになった。


さっきまでは

桜井がある意味いいムードメーカーだったせいか

緊張が解れていたのだけれど


今は…というと

少し、心臓がドキドキしていた。


キスする勢いがあったくせに…


残念なことに

今日は雨が降る気配もなくて

二人の間にある距離が

少しだけ寂しく感じた。


だからと言って

いきなり手は繋げない。


「今日も送ります」


「あ…でも…」


「もう少し、一緒にいて構わないならですけど…」


「一人で帰るのは寂しいですし、一度送ってもらってるし

別に嫌な理由は無いんですけど…」


ガツンと言えない僕と

曖昧に答える彼女。



好きだと伝えたけれど

好きという言葉だけでは

一気に距離は縮められない。


はぁ…

このまま力づくで彼女の身も心も

奪ってしまえたならいいのに…


そうすれば

少しは、この関係に白黒つけやすいのに…


でも…

強引に行き過ぎて

逃げられるのは悲しいから

僕の思考はこうやって

堂々巡りを繰り返すのだった。

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