第52話

「久々に飲んだなー」


「相変わらずの飲みっぷりだった」


こんな僕らのやり取りを見て

吉田さんは、くすくすと笑っていた。


「じゃあ、俺はこれ以上二人の邪魔をしないように

ここで別行動とるかな」


桜井は、僕のことをずっと心配していた。

それは、今日に限ったことじゃなくて、

長いことずっと…


前カノの別れてから

全然女っ気がなくて、このままずっと

一人でいるのかと思われていたから。


この会社を少しでも大きくしようとしていたから

必死で働いてきた僕。

彼女なんか二の次だった。


小さい会社で、社員は吉田さんが来る前は

僕を含め3名だけだったから

社内恋愛なんてあり得ないし。


朝から晩まで

とにかく働きづめで

会社以外の場所にも出会いなんて

無かった。


家に帰ったら仕事の日は寝るだけ。

休みの日も、最近はぼーっとするだけで

女子という存在が視界に入っていなかった。


それなのに…

こういうことって

本当にあるんだ。


まさか、会社に面接に来た女性が

運命を感じる相手になるなんて…


運命的な出会い


そんなのあるわけないって

ずっと、思ってたけれど


彼女とは、本当にそうとしか

思えない僕だった。

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