第51話
「吉田さんって、下の名前は何て言うんですか?」
「遥です。遥か彼方の遥です。」
「遥さんか、俺は…」
「桜井は、下の名前で呼ぶのは今は禁止」
そう言って僕は桜井の言葉を遮った。
「名前聞くくらい、いいじゃん、だいたい今は禁止とか
良く分からないんだけど」
桜井は痛いところを突いてきた。
咄嗟に出てきた本音。
今は…とか
普通なら言わないけど…
でも…
「どっちにしても、名前で慣れ慣れしく呼ばないこと」
「なんか…雨宮、風紀委員長みたいだな」
そう言いながら、桜井は笑い出した。
言われてみれば、
桜井には、あれもダメ、これもダメ
とダメだしばかりしている気がする…
でも、
この時の僕は焼きもちを妬いていて
桜井に彼女の名前を気軽に呼んで欲しくなかった。
僕だって、まだ、吉田さん
っていう呼び名でしか、彼女のことを
呼んでいないのに…
遥
とか
いつか呼び捨てしてみたい…
きっと、多分
まだまだ先になりそうだけど…
遥…か…
年上の彼女を
呼び捨てしたりしたら
やっぱり
彼女は、嫌な顔をするのだろうか…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます