第49話

もしも、目の前に

桜井がいなかったら

僕は、吉田さんの手を握るくらいは

していたのかもしれない。


でも今はそれをできずにいた。


それなりに

アピールはしたいと

思うけれど

年下でガツガツしているという風には

思われたくないとは、最初からずっと思っている。


だからと言って

吉田さんの、心の何処まで

踏み込むのがセーフなのか

分からない…


いっそのこと

一思いにに一線を超えてしまえれば

いいのだけれど…


そんな風に

直ぐに手を出す男だとは

思われたくないし。


明日も明後日も

会社が休みの日以外は

毎日顔を合わせるのだけれども

それだけじゃ

ちょっと寂しい。


せっかく

一緒の会社で働くのだから

もう少し距離は詰めたい。


そのもう少しの

加減が…分からないから

困る…。


僕じゃなきゃ好きになれないくらい

骨抜きにしてしまいたいけれど…

多分、僕の方が骨抜きになっているんだろう…


こんなに

誰かのことを好きになるなんて

いつ以来だろう…


いや、多分きっと

初めてだろう


何故なら、彼女は

僕の運命の人だから。


そう信じているから。



彼女も

そう思ってくれてたらいいのに…


僕がイケメンだから

好きとかじゃなく

性格がいいからとかじゃなく

声がいいからとかじゃなく

僕だから好きだと

いつか言ってくれないだろうか…。


少しは僕に好意を

持ってくれているのだろうけれど

まだ、本当には

警戒心を解いてくれていないような

そんな気がする…。

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