第45話

桜井は、ビールが好きなので

今日は、アットホームな居酒屋へ行くことになる。

僕は吉田さんの横をしっかり陣取って

桜井から、しっかりガードした。


「大事なんだな」


「勿論」


「珍しいな、その強気な言葉、いつもは

穏やかな雨宮からは想像つかないけれど…」


吉田さんが、僕らの会話を

聞いていたのかどうか

分からないけれど


僕は、桜井との会話の中でも

しっかりアピールしているつもりだった。


「社長と桜井さんは、ビールですよね?」


「今日は、雨宮の驕りなんで、好きなの頼んでいいですよ」


「じゃあ、私は、梅酒にしてみようかと…」


「分かりました、頼んじゃいますね」



ものの5分もしないうちに、ビールと梅酒が運ばれてきた。


「しかし、めでたいね」


「何が?」


「で、二人は、どこまでいってるんですか?」


ビールをごくりと飲み干すなり、桜井は吉田さんに

いきなり、そんな質問を投げかけた。


吉田さんは戸惑っていた。


まぁ、女性の口から、


キスはしました


とか言うのは抵抗あるだろうし…


何もしてなかったなら

スルーしやすい質問だったんだろうけど

事実としては、何もないわけではない。


「桜井、下世話過ぎ」


「だってさ、お前が、あの人以外の女子と一緒にいるところ

久々に見たからさ、俺、心配してたんだよねー、お前にまた

彼女ができるのかなって」


「彼女だって、紹介したいところだけど

まだ保留中なんだ」


「そうなんだ、ということは、雨宮からアプローチしたんだ?」


「うん」


「吉田さん、こいつ、モテますけど、彼女には一途なんで、

良かったら、いい物件なんで、もらってやってもらえます?

彼女なんて、もう、何年くらいいなかったか…」


「そうなんですか?」


「雨宮は大学出て、就職して、それから、2年くらいで退職して

大学時代から、ほそぼそとやっていたこの会社を

本格的に立ち上げましたからね、恋愛なんかする暇ないですよ、

俺は、副業みたいな感じで、ここに在籍してますけどね」

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