第44話

「昼に電話したときに話がついてれば

会社まで来ることなかったんだけどさ。

凄く、長い時間電話鳴らしてたんだけど

全然出てくれなかったから、心配してたんだよ、

これでも」


桜井は、ホッとしたような顔を僕に見せた。


僕は、まさかその時、吉田さんに告白をし

キスをしていたなんて言えるはずもなく…


「本当に、悪かった!」


「そう思ってるなら、飯でも奢れよな」


「今日?」


「今日じゃなくて、いつ奢るんだよ、

来月も、しばらく会社には来ないよ?」


桜井は悪気無いんだろうけど

今日じゃないと嫌みたいだった。


今日は、せっかく吉田さんと

一緒に…時間の許す限り過ごしたいと

思っていたのに…


朝までとか…

は、無理なのかな…

まだ、彼氏認定されてないし。


「分かったよ」


「あ、じゃあ、私は、先に帰りますね」


吉田さんは、気を利かせたつもりか

先に帰ろうとする。


僕は、思わずその手を掴む。


色白な手首で

柔らかくて…

ドキッとした。


「あの?」


「帰るんですか?」


「吉田さんも、一緒にどうですか?」


「え、でもお二人の付き合いからすると

久々に会ったのなら、積もる話があるんじゃ?」


「いえいえ、吉田さんがいてくれたほうがいいですよ。

雨宮だって、絶対に」


そんなわけで、僕らは、またまた食事をすることに。



今日は、二人っきりじゃないので

どうなるのやら。



今日も、どうかボロが出ませんように…


そう願いながら、今日は桜井の好きな店に行くのだった。

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