第46話

あの人って、誰なんですか?


そう聞くのがなんだか

怖くて何も聞けなかった…


なんだか、触れてはいけない気がして…


聞いたら、ものすごくショックを受けそうな

自分がいるような気がして…


でも、しばらく彼女がいないって

社長と長年の付き合いの桜井さんも

言ってるし…


考えすぎなのかな…とも思いました


桜井さん、社長のこと

物件って言ってたけど…

こっちの仕事が副業として

本業は不動産関係なのかな…


いかにも営業マンっぽいし…


気分を紛らわせたくて

そんなことを考えてました。



桜井さんは、とにかく酒豪で…

生ビールを何杯も頼んでました


社長は、2杯目にやっと突入したと言うのに…



私は、最初に注文した梅酒を

ちびちび飲んでいました。


社長との距離が近すぎて

ドキドキが止まらなくて…

困っていました…


わざとなのか

偶然なのか

何度か肘が当たったりしてるし

心なしか、距離を縮めてるような気がしていました。


随分、長いことデートもしていない私には

免疫が落ちていて、刺激が強く感じていました。


今日

もしも、桜井さんが来ていなかったら

私と社長は、どうなっていたんでしょう?


あの、キスの続きをしていたのでしょうか?


そんなことを

考えると顔が火照ってきていました。


「吉田さん?大丈夫ですか?顔が赤くなってますが…」


そう言いながら、私の顔を覗き込む社長と目が合って

ますます顔を赤くする私。


あのキスの続きを考えてたことを

社長に見透かされたくなくて


「この梅酒、度数がきつくて

酔ってきてるのかもしれないですね」


そう言って誤魔化すのが精いっぱい…


「僕も、梅酒飲んでみようかな」


社長はそう言って、私のコップを手に持ち

ゴクリと一口飲みました。


「確かに…吉田さんにはきついかもしれないですね」


「吉田さん、お酒弱いんですか?」


「強くも弱くもなく普通ですよ」


「あ、俺も飲んでみたい」


「桜井は駄目」


そう言いながら、社長は私のコップに入った

梅酒を一気に飲み干しました。


「ちょ…早っ、もう飲み干してるし…吉田さん

大事にされてますねー」


私のお酒を飲むくらいで大事にされてるとか…


なんだか良く分からないでいると


「間接キスすら、俺には許されないのか」


と桜井さんが言ってるのを聞いて

そこで初めて、その意味に気付きました。


まぁ、まだ付き合っていないわけだけど…

こんな独占欲的なものを見せてくれる社長が

異性として頼もしく思えました…


こんな超年下男子とは

付き合ったことないけれど

異性なんだなと改めて思うと同時に

曖昧な返事しか返していないのに

こんな人が彼氏だったら

私も嬉しい。


桜井さんのいい物件の言葉の意味を

改めて感じとるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る