第31話

「社長って…色々お店知ってますよね、

食べるのが、好きとか?」


「それもあるけれど、仕事柄忙しくて

あまり自炊したりしてなくて…」


「そうですよねー、社長ともなれば当然

プライベートの時間は減りますよね」


「でも、実は、料理は得意な方なんですけどね」


「そうなんですか?男の人で料理できるのって

ポイント高いらしいですよ」


「吉田さん的にもですか?」


「え?」


「吉田さん自身も、料理が得意な男性がタイプなのかなと…」


「一緒にキッチンで料理とか憧れますね」


ん?

社長のアプローチが

少しずつ大胆になってきてるような気がする…

好意を持たれてるかどうか

分からないからアプローチと呼んでいいのかどうかも

分からないけれど…


でも、そうだったら嬉しいです。

10歳近く年上の私を恋愛対象として

見てくれるなんて…


違うと思ってますけど…


あくまでも、社長と、社員の立場からの

発言なんでしょう。


イケメンに私なんて

釣り合うとは思えないし

あまり、良く考えすぎないようにしなきゃ…



「このお店の料理は、どれでも美味しいんですけど…

僕的には、ドリアがおススメかな」


「社長、全制覇してそうですよね」


私は、笑いながら言いました。


「当たってますね」


社長もそう言いながら

笑っていました。


至福の時…ってこういう時間を言うんでしょうか。


とにかく

この、ありふれた会話が

幸せすぎてたまらない私がそこにいました。

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