第32話

事務所に戻って

僕は、まずメールのチェックを始めた。

お昼休憩1時間の間でも

随分溜まっていて、すべてに

目を通すのに、かなりの時間がかかった。


今日は、いつもより

メールが多いな…

月曜だから当然か…


吉田さんは

今日も郵便物の開封をしていた。

黙々と、開封しているのかと

思いきや


不意に


「今日の分の郵便物って、もう届く時間ですかね?」


と顔を上げて言った。


「確か…3時くらいだったんじゃないかな」


「じゃあ、まだ早いですね、とりあえず、今ある分

片付けますね」


「ありがとう、吉田さんが来てくれて、本当に助かります」


こればっかり言ってる…。

他に感謝の気持ちを伝える言葉が無くて

我ながら、ボキャブラリーの少なさに情けなくなる…


「仕事なんで」


と吉田さんは言う。


今も、僕たちは、事務所に二人きり。


しばらく、他の社員にはテレワークでいてもらおう。

そして、その間に、吉田さんを口説き落とす。

頑張ろう。


「東京には、仕事を探しに来たって言ってましたよね」


「そうですよ」


「彼氏とかは…」


と言いながら、僕は言葉を濁す。

彼氏いるんですか?

と直球で聞きすぎるのには、抵抗があったから。


「彼氏いたら、どうしたんでしょうね。

いないですけど、いたら結婚迫ってたかもしれませんねー」


彼氏はいないんだ。


良かった。


吉田さん的には

良くないのかもしれないけれど

僕的にはラッキーだ。


今までは

彼氏がいたら、悪いなと思い

あまりガツガツいけなかったけれど…


これからは…


「僕も、彼女いないです」


とりあえず、彼女いない宣言だけしておいた。

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