第25話

吉田さんに、ほとんど有無を言わさず

借りてきたハンドタオルは

ほのかに彼女の匂いがした。


とは言え、返すつもりはないのだけれど。


まだ、プライベートで仲良くはなっていないので

休みの日まで彼女の時間を奪うのもはばかられた。

それに、今日だって初対面の僕を相手にして

疲れているかもしれない。


あくまで、僕と、彼女は、まだ

社長と社員の間柄。


それ以上の関係を望むべくして

今日は、食事に誘ったけれど

僕の誘い方が下手なのか

それとも、しばらくデートもしていなくて

恋愛偏差値が下がっているのか

吉田さんの反応は、異性というより

社長としてしか僕を見ていないようにみえた。


もうちょっと

仲良くなったら

朝まで…一緒に…



いられたら、幸せなんだろうな。


早く、そうなりたい。


なりたいけれど

年下の男だと

見くびられるのは

一番悔しいことだったから


とりあえず

我慢我慢。


理性理性。


彼女を困らせたくは無いけれど

最大限に

この社長という立場は

利用しなければ。


なんて、ちょっと腹黒いこと

考えてるなんて

彼女は知るはずもないだろう。


今日は、社長の仮面が

外れそうになりつつ

なんとか持ちこたえたと

思っているから。



結局、吉田さんに

彼氏がいるのかどうかは

聞けなかったな…


さりげなく

聞き出すにはどうしたらいいんだろうか…

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