第22話

ち、近い…

社長と相合傘って…


イケメンと相合傘って…


嬉しい…

嬉しいに決まってるけど

息をするだけでも苦しい…


近すぎて、緊張してしまう…


見上げたら

すぐそこには、社長の顔があって


目が合いました。


ドキッ…。




にこやかに笑いながら


「大丈夫ですか?濡れてないですか?」


社長は私のことを気にかけてくれました。


「大丈夫です、ありがとうございます」


いつもなら、このあと


社長も、濡れないように、ちゃんと

傘に入って下さいね。


くらいの言葉を続けているんだろうけれど

今日の私には余裕がありませんでした。


社長、イケメンすぎる。

性格も、イケメンだし、声もイケボだし。

非の打ちどころがなさすぎる。


あ、駅まであと少ししかない…


この心地よい緊張感も

もうすぐ終わるんだ…


社長と変わらぬ年齢の女子なら

どうしてるんだろう…


私は、社長より10個近く歳上だから

どうしても、理性を保ってしまう…


そんな風に、ぐるぐる色々考えていたら

不意に、社長に肩を掴まれました。


ハッとして社長を見上げると


「危ないですよ、そこの電柱に激突寸前でしたよ」


と、またもや爽やかな笑顔。


ダメだ…

私、この人のこと

会って間もないっていうのに

好きになりかけてる…


いや、好きになってる。


そうは思っても、そんなこと

自分の職場の社長相手に言えるはずは

無いですよね。

ましてや、初対面の初日なのに。


社長が触れた、肩が

じんわり熱くなっているような気がしました。


もう、無理…

これ以上一緒にいるなんて

理性が飛んでしまいそうで…


たかだか、肩を掴まれたくらいで

この破壊力。

イケメン社長、恐るべしです。


それなのに…


「もう、夜も遅いし、東京方面には

慣れてないですよね、今日は、家まで送ります」


「…え?…え?」


「送らない方がいいのかな…」


「送っていただけるのは嬉しいんですけど…」


「僕の家、吉田さんの家から近いんですよね、実は…」


「そうなんですか?」


「はい、それを言ったら、警戒されるかなとか思ったので

言いそびれたんですけど…」


「警戒ですか?」


「ストーカーされるとか思われたら嫌だなって…」


「考えすぎですよ」


っていうか、ストーカーされてもいいです。


という言葉を私は飲み込みました。

まぁ、当たり前ですね。

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